私立保育園における前期末支払資金残高の取扱い

社会福祉法人

委託費の弾力運用で知られる「子ども・子育て支援法附則第6条の規定による私立保育所に対する委託費の経理等について」という通知があります。

保育関係者は必ず一度は見たことがある通知だと思います。私も一部保育に関係する仕事をしていますので、一度だけではなく何度も、いや数十回読んでいますが、今日はこの通知から。

子ども・子育て支援法附則第6条の規定による私立保育所に対する委託費の経理等について

  1. 委託費の使途範囲
  2. 処遇改善等加算の取扱い
  3. 前期末支払資金残高の取扱い
  4. 委託費の管理・運用
  5. 委託費の経理に係る指導監督
  6. 措置費等の取扱い
  7. 平成26年度末時点において生じた繰越金等の取扱い
  8. その他

以上、8つの項目からなる通知です。

前期末支払資金残高の取扱い

実際にどのような取扱いが求められているかというと、

(1)前期末支払資金残高の取り崩しについては、事前に貴職に協議を求め、審査の上適当と認められる場合は、使用を認めて差し支えないこと。

これは事前に都道府県に協議を求めて、OK が出たら前期末支払資金残高を取り崩すことができるということ。そして、さらに・・・

(2)前期末支払資金残高については、1(5)の要件を満たす場合においては、あらかじめ貴職(当該保育所の設置主体が社会福祉法人又は学校法人である場合は理事会)の承認を得た上で、当該施設の人件費、光熱水料等通常経費の不足分を補填できるほか、当該施設の運営に支障が生じない範囲において以下の経費に充当することができる。
① 当該保育所を設置する法人本部の運営に要する経費
② 同一の設置者が運営する社会福祉法第2条に定める第1種社会福祉事業及び第2種社会福祉事業並びに子育て支援事業の運営、施設設備の整備等に要する経費
③ 同一の設置者が運営する公益事業(子育て支援事業を除く)の運営、施設設備の整備等に要する経費

こちらは、「1(5)の要件」というものが出てきますが、通知の1(5)を読むと、「(4)に掲げる弾力運用に係る要件を満たした上で・・・」と書いてあります。

そこで(4)を読むと、「(1)に関わらず、別表1に掲げる事業等のいずれかを実施する保育所であって、(2)の①から⑦までに掲げる要件を満たすものにあっては・・・」と、どこまで遡るのかと笑

ですが、要件が分からないと取扱うことができないので、長くなりますが全部書いてみます。

(2)①~⑦の要件を満たす
① 児童福祉法第45条第1項の基準が遵守されていること。
② 委託費に係る交付基準及びそれに関する通知等に示す職員の配置等の事項が遵守されていること。
③ 給与に関する規程が整備され、その規程により適正な給与水準が維持されている等人件費の運用が適正に行われていること。
④ 給食について必要な栄養量が確保され、嗜好を生かした調理がなされているとともに、日常生活について必要な諸経費が適正に確保されていること。
⑤ 入所児童に係る保育が保育所保育指針を踏まえているとともに、処遇上必要な設備が整備されているなど、児童の処遇が適切であること。
⑥ 運営・経営の責任者である理事長等の役員、施設長及び職員が国等の行う研修会に積極的に参加するなど役職員の資質の向上に努めていること。
⑦ その他保育所運営以外の事業を含む当該保育所の設置者の運営について、問題となる事由がないこと。

(4)いずれかを実施
1 延長保育事業
2 一時預かり事業
3 乳児を3人以上受け入れ
4 地域子育て支援拠点事業
5 特別児童扶養手当の支給対象障害児の受入れ
6 家庭支援推進保育事業
7 休日保育加算の対象施設
8 病児保育事業

(5)(社会福祉法人の場合)
① 「社会福祉法人会計基準」に基づく資金収支計算書、事業区分資金収支内訳表、拠点区分資金収支計算書及び拠点区分資金収支明細書を保育所に備え付け、閲覧に供すること。
② 毎年度、次のア又はイが実施されていること。
ア 第三者評価加算の認定を受け、サービスの質の向上に努めること。
イ 「社会福祉事業の経営者による福祉サービスに関する苦情解決の仕組みの指針について」により、入所者等に対して苦情解決の仕組みが周知されており、第三者委員を設置して適切な対応を行っているとともに、入所者等からのサービスに係る苦情内容及び解決結果の定期的な公表を行うなど、利用者の保護に努めること。
③ 処遇改善等加算の賃金改善要件(キャリアパス要件も含む。以下同じ。)のいずれも満たしていること。

以上の要件を満たすことで、前期末支払資金残高を下記の3つの経費に充当することができます。

① 当該保育所を設置する法人本部の運営に要する経費
② 同一の設置者が運営する社会福祉法第2条に定める第1種社会福祉事業及び第2種社会福祉事業並びに子育て支援事業の運営、施設設備の整備等に要する経費
③ 同一の設置者が運営する公益事業(子育て支援事業を除く)の運営、施設設備の整備等に要する経費

複数園を経営している法人のメリット

一法人一施設のところであれば、あまりメリットはないかもですが、複数の保育園を経営している法人だと、ある程度、計画的に資金を施設設備に投資することができます。先ほどの②の部分ですね。

①の部分も法人本部拠点区分の収入がもともと少ないですから、施設拠点区分から繰り入れて法人本部の運営に使用できますね。

あと、保育所の設置主体が社会福祉法人又は学校法人である場合は理事会の承認のみ、都道府県との協議は不要というところもポイントですね。

ただし、このような取扱いができるからと言って、次から次へと施設整備を行っていると、どうしても人件費が少なくなる傾向があるように思います。

人件費は確保しつつ、計画的、これ重要ですね、計画的に施設設備の整備を行うことが大切だと思います。

P.S. 当期末支払資金残高をゼロにする?

以前聞いたことがあるのですが、決算時に当期末支払資金残高を必ずゼロにしなければならないという社会福祉法人がありました。どんなときもゼロです。たぶん、市町村の影響を大きく受けている法人だったのでしょう。

でもこれかなり無理がありますよね。

反対に、毎年ゼロだと疑ってしまいます。何か操作しているのではないかと。